どうも、服部です(ハットリって誰?)。
よく聞くと思うんですが、「現状維持は衰退だ」という言葉があります。
この言葉は「動け!」と煽りたい側にとってはめちゃくちゃ便利で、成長していない人を見つけて「そのままではダメ」「挑戦し続けろ」と言えば、それっぽい話になります。
ただ、いかなる場面でもこのロジックが通用するのかと言うと、そうではなくて。
なぜなら、現状を維持するだけでもけっこう努力が必要で、何もしていない人と、変化へ対応しながら今の状態を守っている人を同じにするのはおかしいんですよね。
とはいえ、「がんばって維持しているんだから、それでいい」とも言えません。
現状維持が衰退になるかどうかは、努力したかどうかではなく、その努力が「過去に作った状態の延命へ向いている」のか「外部の進化速度への適応へ向いているのか」で決まります。
この違いを見ずに「現状維持は衰退」と言っても、ただ人を焦らせているだけです。
現状維持には、普通に努力がいる
売上を前年と同じ水準へ保つ、同じ人数のお客さんと付き合い続ける、商品の品質を落とさない、発信を同じ頻度で続ける、健康な状態を保つ…といったことは、止まっていても勝手に維持されるわけではありません。
お客さんの状況は変わるし、競合も増えるし、仕入れや広告のコストも動き、使っているサービスの仕様も変わります。
自分の体力や使える時間だって、ずっと同じではないですからね。
つまり、数字や見た目が同じでも、その裏側では変化を吸収するための仕事が増えている場合があるということです。
昨日と同じ結果が出たからといって、昨日と同じ仕事をしていたわけではありません。
たとえば、離れたお客さんの分だけ新しいお客さんと出会い、上がったコストを別のところで吸収し、変わったニーズへ商品を微調整して、ようやく前年と同じ売上を保てることがあります。
この状態を見て「成長していないから何もしていない」と評価するのであれば、現場を見てなさすぎですよね。
現状維持は停止ではなく、外から加わる変化と同じだけ動いた結果、同じ場所に立っている状態でもあるんですよね。
なので、「維持できた」という結果だけで、その人や事業が衰退しているとは言えません。
問題は、そのために何を変えたのか、あるいは何も変えず、どこへ負担を押し込んだのかです。
過去に作った状態の延命は、限りなく衰退に近い
現状維持のために努力していても、その努力が過去に上手くいった商品、やり方、組織、集客経路を壊さないためだけに使われているのであれば、僕は衰退に近いと判断します。
商品が前ほど選ばれなくなったから特典を増やす、反応が落ちたから投稿数だけ増やす、仕事の流れが悪いから確認作業と会議を増やす、利益が減ったから自分の労働時間で埋める、といった状態です。
どれも、めちゃくちゃ努力はしています。
が、その努力で守っているのは、お客さんが受け取る価値ではなく、昔作った形なんですね。
過去の成功を守っているようで、実際は過去の成功を介護しているだけ、みたいなことが普通に起きているということです。
しかも、こういう時は本人が忙しいので、衰退に気づきにくいんですよ。
毎日やることがあり、以前よりがんばっている実感もあるため、進んでいるように見えるんでしょうけど、増えているのが修理、説明、確認、値引き、謝罪なのであれば、事業の体力は削られています。
売上が同じでも、そこへ使う時間が増え、利益が減り、自分が抜けられなくなっているのであれば、それは維持ではありません。
見た目の数字を保つ代わりに、内側が後退しています。
まとめると、延命になっている現状維持というのは、同じやり方を守るために、時間、お金、人、確認作業が増え続けている状態だということですね。
もう一つは、相対的な衰退です。
自分の商品やサービスが去年とまったく同じ品質を保っていたとしても、周りがもっと分かりやすく、速く、使いやすくなれば、お客さんから見た立ち位置は下がります。
自分が悪くなっていなくても、選ばれる理由は薄くなるということです。
市場は「去年の自分よりがんばったか」ではなく、今ある選択肢の中で判断されるので。
なので、過去に作った状態をそのまま残すことへ労力を使い続けると、絶対値では維持でも、構造上は相対的に衰退していきます。
外部の進化へ適応しているなら、それは成長に近い
一方で、努力の方向が外部の進化速度への適応であれば、見た目の数字が同じでも中身は成長しています。
ここで言う適応は、新しいツールが出るたびに飛びつくことでも、競合が始めたことを全部マネすることでもありません。
そんなことをしていたら、進化へ適応する前に、新着情報の処理だけで一日が終わるので、そうではなく、守りたい価値を残すために、やり方の方を変えることです。
お客さんへ提供する品質を落とさないために作業を仕組み化する
同じ仕事へ使う時間を減らすためにAIを使う
コストが上がっても無理な値下げで吸収せず、商品構成や価格を見直す
発信する場所が変わっても伝える内容の芯は変えない
といったことですね。
結果として売上が同じでも、前より少ない負担で出せているのであれば、次に使える余白が増えています。
同じ人数のお客さんと付き合っていても、関係が深くなり、無理な相手を追わなくてよくなったのであれば、事業は強くなってますからね。
また、同じ品質を保ちながら、自分が休んでも回る範囲が増えたのであれば、それも成長です。
成長は、数字を大きくすることだけではなく、外部環境が変わっても、大切な価値を前より無理なく残せる構造へ変わることなんですよ。
この見方をしないと、売上や人数を増やした人だけが成長で、同じ成果を少ない負担で出せるようになった人は現状維持という、変な評価になります。
むしろ後者の方が、次の変化へ使える時間もお金も残るので、長く続けるのであれば強いですよね。
事業を売上だけではなく、収益性と継続性から見る理由もここにあります。
守るべきものと、変えるべきものを逆にしない
現状維持を考える時に必要なのは、何でも変えることではなく、守るべきものと変えるべきものを分けることです。
守るべきなのは、お客さんとの約束、提供する価値、品質、信頼、自分や家族が疲弊しない働き方などで、過去に決めた手順、使っている道具、商品の見せ方、集客経路、価格まで永遠に守る必要はありません。
が、現場ではこれが逆になりがちです。
たとえば「ずっとこの方法でやってきた」「この商品で売れてきた」「今さら変えると面倒」という理由でやり方を守り、その代わりに利益、時間、品質、家族との時間を削ってしまう、みたいな。
何を守ってるんですかっていう話です。
価値を守るために手段を変えるのが適応で、手段を守るために価値を削るのが延命であり、ここを逆にすると、努力量が増えるほど衰退が進みます。
しかも本人はがんばっているので、周りから「もっと努力しろ」と言われたら、さらに同じ方向へ走ってしまうんですね。
必要なのは努力の追加ではなく、今やっている努力が何を守っているのかを見直すことです。
すべてを変え続ける必要もない
とはいえ、外部の進化へ適応すると言っても、世の中の変化を全部追う必要はありません。
新しいSNS、新しいAI、新しい販売方法が出るたびに手を出して、どれも中途半端になるのであれば、それは適応ではなく、トレンドや情報の奴隷になっているだけですからね。
変えないという判断が正しい場面もあります。
今のお客さんとの関係を深めたい、品質を落としたくない、健康や家族との時間を守りたいという理由で、事業規模を広げない選択をするのであれば、売上が増えていなくても衰退とは言えません。
その状態を無理なく続けられるように、仕事の流れやコスト、役割分担を更新できているのであれば、見た目は維持でも構造は成長しています。
また、過去の仕組みを一時的に延命すること自体が、すべて悪いわけでもありません。
次の商品へ移るまで、今の商品を一定期間だけ残す、資金や人の準備が整うまで既存の仕組みを使うなど、守る期間とやめる条件が決まっているのであれば、それは逃げではなく移行のための戦略です。
危ないのは、いつまで守るのかも、何が起きたらやめるのかも決めず、「まだ動いているから」という理由だけで延命を続けることなんですね。
撤退は失敗ではなく、次へ動くための判断なので、やめる条件は元気なうちに決めておいた方がいいです。
現状維持が衰退かを見分ける質問
現状維持できているように見えても、次の質問へ答えると、延命なのか適応なのかはかなり見えます。
同じ結果を出すための時間・お金・人・確認作業は増えていないか
お客さんや外部環境が変わったのに、商品ややり方だけ昔のままではないか
今日ゼロから作るとしても、今と同じ仕組みを選ぶか
最近の改善は、負担やミスを減らしたのか、応急処置を増やしただけなのか
その努力で本当に守りたいものは何か
全部の数字を伸ばす必要はありませんが、同じ結果を出すための負担が増え続けているのであれば、どこかで構造を変えないと、いずれ維持すらできなくなります。
逆に、外部の変化に合わせて手段を入れ替え、同じ価値を少ない負担で届けられるようになっているのであれば、数字が横ばいでも悲観する必要はないです。
現状維持を言い訳にして何も変えないのも、「衰退」という言葉で自分や他人を雑に追い込むのも、どちらも違います。
努力しているかどうかより、その努力がどこへ向いているかを見るべきです。
現状維持を分ける判断基準として、過去に作った状態を守るための努力なら衰退に近く、外部の進化へ適応しながら大切な価値を守る努力なら成長に近い
、ということを持っておきましょう。
変えないために、変え続けているのであれば、その現状維持は、それはもう成長なんです。






















