どうも、服部です(ハットリって誰?)。
AIを使う人は増えましたが、AIへの音声入力まで使い倒している人は、意外とまだそんなに多くないんですよね。
人前でしゃべるのが恥ずかしいとか、誤変換を直すのが面倒とか、理由はいくつもあるんでしょうけど、一番もったいないのは、音声入力がまだ「タイピングより速く文字を入力するための機能」くらいにしか見られていないことです。
シマダ(@shimada.info)さんが、音声入力は、ただ業務が速くなるのではなく「何のため活用するのか」という視点で記事を書いていたのが素晴らしかったので、できるだけ内容が被らないように、僕の考えも残しておこうと思います。
短いLINEを送るとか、検索窓へ数語入れるだけなら、普通に打った方が早いですし、誤変換を直す手間まで考えたら、わざわざマイクへ話しかける意味はありません。
ただ、音声入力が強いのは、考えがまだ整理し切れていない時や、AIへ細かい背景まで渡したい時なんですね。
文字で指示を書こうとすると、人は無意識に情報を削ります。
自分で文章として整え、AIが理解しやすそうな質問へ短くしてから送るんですが、その余計な「親切」のせいで、AIが判断するために必要だった背景、感情、迷い、条件まで消えていることがあるわけです。
音声入力は、文字を速く打つための機能ではなく、頭の中にある判断材料を、削る前にAIへ渡すための手段です。
短いLINEや検索なら、普通に打った方が早い
とはいえ、何でも音声入力にすればいいという話ではありません。
例えば、「今日19時に帰る」「明日の天気」「近くの焼肉屋」くらいなら、キーボードで打つ方が早いし、周りに人がいる場所でスマホへ話しかける必要もないですからね。
音声入力そのものを使うことが目的になっている人を見ると、それは違うやろとなります。
便利な機能を覚えた途端、簡単なことまで全部その機能でやり始める人がいますが、手段を増やした結果、やることまで増えているのであれば、寿命を削っているだけです。
音声入力を使うかどうかは、文字数で決めるものではないんですね。
長い定型文を正確に入れるだけなら、登録した文章を呼び出した方が早いですし、固有名詞、URL、数字が多い内容は、最初から文字で入れた方が修正も少なく済みます。
逆に、数行しかなくても、前提が複雑で、自分の中でもまだ答えが決まっていない相談なら、音声で話した方がAIへ渡せる情報は増えますよね。
つまり、音声入力は入力する文章の長さではなく、頭の中に散らばっている判断材料の多さで使い分けるんです。
文字で指示を書こうとすると、背景を削ってしまう
検索を長く使ってきた人ほど、「ちゃんと質問しなければ、ちゃんとした答えが返ってこない」という感覚があります。
検索窓へ長い事情を書いても仕方がないので、知りたいことを短いキーワードへ変え、余計な情報を削り、検索結果が出そうな言葉へ整える癖が付いてるんですね。
散々「検索力を上げろ」と言われてきたし、質問力がないと「ググってもカス」とも言われてきたし、実際、Google検索ではその考え方で合っていました。
が、それが今の時代では完全に裏目に出てしまっているので、考え方や意識そのものを変えないと、置いていかれちゃいます。
AIとの対話でも検索と同じことをすると、「売上を増やす方法を教えてください」「この文章を分かりやすくしてください」「新商品のアイデアを出してください」みたいな、きれいだけど中身のない質問になります。
そしてAIから返ってくるのは、ターゲットを明確にしましょう、強みを整理しましょう、発信を続けましょうといった、まぁ間違ってはいない答えです。
当たり障りのない質問に、当たり障りのない答えが返ってきただけなのに、「やっぱりAIは一般論しか言わない」となるんですが、AIが一般論しか言えないのではなく、一般論から外れるための情報を、入力する前にこちらが捨ててるんですよ。
文章にしようとした瞬間、「こんなことまで書かなくていいか」「これは本題と関係ないか」「長くなると伝わりにくいか」と整理してしまい、実は判断へ影響している小さな違和感まで削っているということです。
AI時代は、整理してから質問しなくていい
AIへ伝える時は、検索するときのように、先に短く整える必要はありません。
何に困っているのか、なぜ今それが気になっているのか、これまで何を試したのか、どんな答えは嫌なのか、誰が関係しているのか、時間やお金にどんな制約があるのかを、思いついた順番で話せばいいです。
途中で話が飛んでも、言い直しても、同じことを2回言っても、整理はAIが勝手にします。
むしろ、最初から自分でキレイに整理できるのであれば、そもそも相談する必要がないことも多いですからね。
自分でも何が問題なのか分からず、事実と感情と推測が混ざり、話しながら「あ、たぶんここが引っかかってるんやな」と気づくような時こそ、音声入力が強いんです。
音声入力が向いているのは、ほとんどの人が(人に対しても)質問や相談を諦めてしまうこんな場面です。
問題の前提が長く、関係する事情が多い相談
やりたいことはあるけど、まだ言葉として整理できていない時
複数の選択肢で迷い、何を優先するか決め切れていない時
背景や感情まで含めないと、表面的な正論しか返ってこない時
たとえば、「この商品を売る方法を考えて」だけでは、AIは商品、お客さん、価格、これまでの販売方法、売れなかった理由を知りません。
が、商品を作った理由、誰に買ってほしいのか、今までどんな反応があったのか、値下げしたくない理由、自分がやりたくない売り方まで話せば、AIはただ売れそうな案を並べるのではなく、どの条件を守りながら売るのかを整理できます。
巷では、「これをこうするプロンプトはこれ!」みたいなのが重宝されてますが、指示や質問が上手くなることより、自分しか持っていない背景を、勝手に不要だと判断して捨てないことの方が重要です。
だって、何かをするたびにプロンプトを仕入れないと何もできないって、「私を正しく動かしたければこれを入力しなさい」ってAIに言われているようなもので、それってAIを使っているのか、使われているかみたいな話になってきますよね。
音声入力では、感情も判断材料として残る
文字で指示を書く時、人は事実だけを残そうとします。
例えば、「A案とB案で迷っています」「それぞれのメリットとデメリットを教えてください」と書けば、一見キレイです。
が、実際には「A案を選びたいけど失敗が怖い」「B案の方が儲かりそうだけど一緒に仕事をする相手が嫌い」「そもそも今これを決めること自体に疲れている」みたいなものが判断へ影響していたりします。
もちろん、感情だけで全部を決めればいいわけではありません。
ただ、今ある感情をなかったことにして条件だけ並べても、本人が実行しない答えができるだけで、正しい選択肢を選んだはずなのに動けない時は、だいたい整理の段階で何かを消してるんですよね。
音声で話すと、「いや、でも」「というか」「本当は」といった言い直しが自然に出ます。
その言い直しにこそ、文章へ整えた時に消えやすい本音や優先順位が入っているので、AIへ話す価値があるということです。
以前、AIへ自分の仕事を渡すのであれば、プロフィールや結論だけではなく、なぜそう判断したのかという履歴を残した方がいいと書いたんですが、音声入力も同じで、完成した指示を速く入力するためではなく、完成する前の判断材料を拾うために使います。
雑に話して、AIに整理させた後で確認する
とはいえ、思いついたことを全部しゃべって送れば、そのまま正しい答えが出るわけでなくて。
話した内容には、勘違い、思い込み、抜け、誤変換も含まれますし、AIは材料が増えた分だけ、もっともらしい筋道を作ることもできます。
なので、音声入力を使った後は、いきなり答えを出させるより、まず「今の話を、事実、僕の解釈、感情、未確認のこと、決めたいことに分けて」と頼む方がいいです。
整理された内容を見て、違うところを直し、足りない背景を追加してから、ようやく案を出してもらうと。
音声入力の誤変換も、一文字ずつ全部直す必要はなくて、意味が変わる固有名詞や数字は直すべきですが、前後から推測できる小さな誤変換まで、人間が先回りして完璧に整えていたら、何のためにAIを使っているのか分からないので。
音声で雑に渡す、AIに整理させる、人間が意味を確認する、足りないことを追加する、この順番なら、速さだけではなく、考えるために音声入力を使えます。
雑に入力することと、雑に判断することは別で、入力は雑でいいですが、AIが整理した内容と最後の答えは、人間が確認しましょうねということです。
音声入力を使わない方がいい場面もある
ここまで話しておきながら、音声入力には、当然、向かない場面もあります。
人がいる場所で話しにくい内容、お客さんや家族の個人情報、会社の機密情報を、何も確認せず外部のAIサービスへ話すのはダメだし、利用しているサービスが入力データをどう扱うのかも先に確認する必要があります。
また、数字、URL、コード、商品名など、一文字の違いで意味が変わる情報は、文字で渡して確認した方が安全です。
あるいは、話すこと自体が苦手で、音声にすると余計に何も出てこない人が、無理に使う必要もないと思っています(訓練はした方がいいですが)。
文字でゆっくり考えることで、自分の思考が深まる人もいるので、音声と文字は、どちらが優れているかではなく、何をAIへ渡したいかで使い分ければいいんです。
短く正確に伝えたいなら、文字で打つ。整理前の背景や迷いまで拾いたいなら、音声で話す。その後、AIが整理したものを文字で読み、人間が修正する。
この使い分けができるのであれば、音声入力を使うか使わないかで悩む必要はありません。
AIへの音声入力で速くなるのは、タイピングではなく思考の受け渡し
音声入力を「しゃべった内容を文字に変える機能」とだけ考えれば、誤変換(今はかなり少なくなっている)は面倒ですし、人前では使いにくく、短い文章ならキーボードの方が早いという結論になります。
それは合ってるんだけど、音声入力の価値は、そこではなく、頭の中にまだ言葉になり切っていないものを、きれいに整えて削ってしまう前に、AIへ渡せることです。
AI時代に必要なのは、毎回完璧な質問を作る技術ではありません。
何が起きたのか、何に引っかかっているのか、どんな答えは選びたくないのかまで雑に話し、整理と問い直しをAIへ任せ、最後の判断だけは自分で持つことです。
音声入力によって速くなるのは、タイピングではなく、自分の頭からAIへ思考を受け渡すまでの時間なんです。






















