洗脳・マインドコントロール

エプスタイン事件を紐解く、究極のブラック・マーケティング

どうも、服部(@marketing_factdeal)です。

マーケティングの究極形は、お客さんに「死んでも離れたくない!」「この人じゃないとダメ!」思わせることです。

とか言うと、キラキラした起業家塾の講師が言いそうなセリフですが、それを文字通り、かつ最悪の形で実現してしまった男がいます。

ジェフリー・エプスタイン。

彼の名前を聞いて「あぁ、あのロリコンの富豪ね」「アイツもアイツと関わった奴もヤバいよね」で終わらせている人のマーケティング脳は、少々おめでたいですね。

彼はただの犯罪者ではなく、世界のトップ層…大統領、王族、天才科学者、巨大企業の創業者たちを、「エプスタイン島(リトル・セント・ジェームズ島)」という名のクローズドな生態系に囲い込み、一生逃げられない仕組みを作り上げた、史上最悪の「プラットフォーマー」です。
 

なぜ、資産数千億を持つような「選ばれし者たち」が、わざわざリスクを冒してまで、アヤシイ男のプライベートジェットに乗り込み、孤島へ向かったのか。

そこには、現代のマーケターが喉から手が出るほど欲しがる「究極のインサイト」と「二度と離脱させないCRM(顧客関係管理)」という、ブラックマーケティングの真髄が隠されています。

多くのマーケター、あるいは経営者は「新規客が来ない」と嘆いているわけですが、エプスタインは「顧客を共犯者にする」ことでLTV(生涯価値)を無限大に引き上げました。

それも、札束ではなく「恐怖と欲望」という、世界で最も硬い通貨を使って、です。
 

ということで今回は、陰謀論よりもエグくて胸糞悪い、現実に存在した「悪魔のビジネスモデル」を徹底的に解剖します(映画になりそうですね)。

市場最も胸糞が悪く、かつ史上最も「成功」してしまったBtoBマーケティング、誰も提供できなかった「究極のベネフィット」の定義と完璧なパッケージング、解約不能な地獄のサブスクリプションなどに触れていきます。

キレイゴトのマーケティングに飽きた人だけ、読み進めて進んでほしいんですが、注意点が一つだけあります。

読み終えたあと、あなたが「顧客をファンにする」という言葉を二度と使いたくなくなっても、僕は責任を取りません。

権威の「ロンダリング」と「社会的証明」のハック

エプスタインのキャリアを紐解くと、驚くほど「中身」が空虚であることに気が付きます。

彼は投資家を自称していましたが、具体的な運用実績は不透明な点が多いようですが、彼は「ブランドは中身ではなく、隣に誰がいるかで決まる」という本質を突きすぎていました。

ビジネスの基本は、言うまでもなく「信頼」であり、実績のない人間とは誰も組まないわけですが、エプスタインは、この「社会的証明」をハックする天才、天性の詐欺師だったんですよね。

権威の借用

彼はまず、サイエンス(科学)の世界に目をつけました。

MITやハーバードなどの研究機関に巨額の寄付をバラまき、ホーキング博士のような「知の象徴」をパーティに呼んだんですね。

科学者たちは、研究資金を喉から手が出るほど欲しがっており、エプスタインはその「パトロン」という座を、お金で買ったんです。

これによって、「世界の天才たちが認めるエプスタイン」という、最強の免罪符(権威の借用)が完成しました。

社会的証明のバグを利用する

マーケティングにおいて「社会的証明」は強力ですが、エリート層においては、これが「紹介制」という形でさらに強化されます。

クリントン元大統領が彼のジェットに乗っている、アンドルー王子と旧知の仲である、と言う事実だけで、後から来た顧客は「あの人が仲良くしているなら、この男は“あちら側”の人間だ」と、脳内で勝手に信頼を補完するからです。

エプスタインは、自分自身を商品にするのではなく、「自分とつながることで得られるステータス」を商品にしました。

狭くて深いコミュニティにおいて、「トップオブトップとつなげるハブ」というポジションを独占したことが、彼のブランディングの勝利だったというわけです。

「不自由な強者」が求めた究極のUX

エプスタインが提供した「島」というプロダクト、そのUX(ユーザー体験)の本質は、サービスの内容そのものよりも「法と視線からの解放」にありました。

世界中から注目されるVIPたちにとって、最大のストレスは「監視」です。

彼は、絶海の孤島という「究極のプライバシー」を提供したわけですが、そこは法も倫理も届かない、その名の通り「楽園」だったわけです。

ターゲットの「真の課題」は何か

大統領や王族、超有名企業のCEOにとって、現代社会で最も手に入らない贅沢品は「監視のない時間」です。

彼らは、24時間365日、スキャンダルを恐れ、パパラッチに追われ、コンプライアンスという鎖につながれているわけですが、エプスタインは、そのインサイトを完璧に突きました。

つまり、「ここなら、何をやっても許される。なぜなら、全員が同じことをしているからだ」という、究極の心理的安全性を提供したんです。

「島」というクローズドなUI

絶海の孤島、プライベートジェット、外部と遮断された豪邸、これらの物理的な仕掛けは、ターゲットの日常の倫理観をオフにするための「儀式」として機能しました。

日常から切り離された空間では、人は驚くほど容易に「悪」に染まります。

彼は、顧客が心に秘めた「最も汚いニーズ」を、言語化せずとも提供できるインフラを自前で構築したというわけです。

マクスウェルという「最強のディレクター」

ここで忘れてはならないのが、エプスタインの右腕、そして社交界の名士として知られる「ギレーヌ・マクスウェル」の存在です。

彼女は社交界のルールを熟知しており、少女たちをリクルートし、VIPの好みに合わせて配膳(アテンド)していまし。

彼女は、最悪の商材を最高の見せ方でパッケージングし、顧客の満足度(と言っても吐き気がするものですが)を最大化する、極めて有能な「チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)」だったんです。

解約率0.1%を実現するブラック・リテンション

ここが、この事件の最も冷徹で、かつマーケティング的に「優れた」と言わざるを得ないパートです。

どういうことかと言うと、顧客を単なる「サービスを享受する消費者」で終わらせることなく、かといってキラキラした「ファン」に昇華させるのでもなく、もっと逃げ場のない「自分と一蓮托生の関係」に強制的に引きずり込んだんです。

般的なマーケティングが目指すのは「愛されるブランド」ですが、エプスタインが構築したのは、愛を必要としない「共犯によるロイヤリティ」だったということです。

ログの資産化(脅迫のデータベース)

エプスタインの邸宅や島の至る所には、隠しカメラが仕掛けられていたとされています。

顧客の「楽しんでいる姿」を記録することは、現代のマーケティングで言えば「ユーザー行動分析」ですが、彼にとって、それは改善のためではなく「終身契約書」の作成でした。

スイッチング・コストを「死」に設定する

一度でもサービスを利用し、その現場を記録された瞬間、顧客は「加害者」のリストに名を連ねることになります。

これが最強の「スイッチング・コスト」と呼ばれるもので、他へ乗り換えるどころか、サービスを解約しようとした瞬間に、社会的死が待っています。

顧客はエプスタインを愛していたわけではないし、むしろ憎んでいた者もいたようですが、彼らは自分の身を守るために、エプスタインを守らざるを得なくなりました。

言ってしまえば「愛されるブランド」ではなく「逆らえないブランド」ですね。

この毒々しいたロイヤリティ・プログラムこそが、彼が長年権力の中心に居座り続けたエンジンだったわけですが、これほどまでに離脱率の低いコミュニティは、世界中探してもなかなか存在しないでしょう。

なぜ「無敵のシステム」は破綻したのか

10年以上、司法の追及すらねじ曲げてきたこのプラットフォームが、なぜ最後は崩壊したのか。

これまでは、富と権力さえあれば、情報の蛇口を完全にコントロールし、「不都合な真実」をゴミ箱へドラッグ&ドロップできましたが、それが通用しない世界になったからです。

つまり、エプスタインは「時代のOSの切り替わりに対する読み違えをした」ということですね。

情報の非対称性の消滅

かつては、メディアのトップと会食し、圧力をかければ、権力者にとって都合の悪いニュースはもみ消せました。

エプスタインは、このアナログな隠蔽工作を得意としていましたが、SNSと分散型メディアの時代になり、かつての被害者たちが声を上げ始めると、情報のコントロールが不可能になりました。

つまり、「個人の告発」が、隠蔽のコストを上回ってしまったんです。

ブランド・エクイティの逆転

当初は、「エプスタインと仲が良い」ことが最強の資産だったわけですが、剥がれ出してからは「最大の負債」へと反転しました。

こうなると、当然、共犯者たちの行動原理は変わります。

自分たちが生き残るために、「プラットフォーマーであるエプスタインを切り捨てる」という選択を始めたわけです。

彼の拘置所での不可解な自殺は、ある意味、システムが「自動クリーニング」を行った結果とも言えるのかもしれません。

デジタルタトゥーという恐怖

プラットフォーマーが消えても、サーバー(記録)がどこかに残っているという恐怖は消えません。

2024年のリスト公開のように、過去のログが定期的に掘り返され、新たな「キャンセル」を生み出し続けます。

そして、Xでも常に話題に上がるように、エプスタインのマーケティングは、彼の死後もなお、顧客を呪縛し続け、恐怖に震えさせているのです。

ブラックボックスの限界点

この事件には、現時点では解読不能な「不明点」が、いくつも残っています。

これらは、今後の公判や資料公開を待つべき領域であり、本記事はマーケティング視点での話なので、安易な推測を避け、概要を記すに留めておきます(あえて情報リンクも貼りません)。

エグすぎる事件なので、興味がある人だけ、自己責任の上で深掘りしてください。

「死」の瞬間のログ欠損

2019年8月、メトロポリタン矯正センターでのエプスタインの急死。

監視カメラの故障、看守の居眠り…あまりに都合の良すぎる「システムのバグ」は、このプラットフォームが強制終了されたことを物語っています。

これが「自主的な解約(自殺)」なのか「運営によるアカウント削除(他殺)」なのか、この真実は、依然として暗号化されたままです。

リストに名を連ねる「沈黙の共犯者たち」の全容

2024年初頭に公開された「エプスタイン・リスト」ですが、そこには確かに超大物たちの実名が並んでいました。

しかし、リストに載っていることが即「サービスの利用者」であることを意味しません。

単に名前が出ただけなのか、ただ会っただけなのか、実際に「島」のUXを享受したのか、この「顧客データの精査」については、司法の手に委ねるべき領域であり、ここでの断定は避けます。

背後に潜む「真の株主」の存在

一介の教育者から巨万の富を築いたエプスタインですが、その資金源には、今も謎が多いです。

彼が単なる「プラットフォームの雇われ店長」に過ぎず、その背後に諜報機関やさらに巨大な「真のステークホルダー」が存在していたという説ですね。

もしこれが事実であれば、この事件はマーケティングを越えた「地政学」の領域に突入するでしょう。
 

あなたのマーケティングは健全なのか

これらの「解明不能なノイズ」に深入りしすぎると、ビジネスの本質を見失うため、今回は、あくまで「エプスタインが構築したシステム」というマーケティング構造にフォーカスしました。

が、この不透明な部分こそが、今もなお世界中に「考察」という名の二次創作(UGC)を生み出し続けている最大のフックであることは間違いありません。
 

エプスタインが作ったのは、単なる犯罪組織ではなく、人間の脆弱性と、権威の虚飾を突いた「完璧なビジネス・エコシステム」でした。

僕たちはマーケティングを学ぶとき、つい「人を幸せにする方法」として捉えようとしますが、この事件が教えてくれるのは、マーケティングは「人を支配する方法」でもあるという冷酷な事実です。

ターゲットを絞り、深く刺し、二度と離さない…そのプロセスに「倫理」というブレーキがついていないとき、僕たちはエプスタインのような怪物を生んでしまうということです

あなたのマーケティングは、誰を幸せにし、誰を地獄へ連れて行こうとしているのか、この記事を閉じる前に、自分の胸に手を当てて考えてみてください。
 

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