どうも、服部です(ハットリって誰?)。
コンセプトメイクの相談を受けると、「40代のひとり社長を、AIとマーケティングの力で自由にする」みたいな言葉が出てきます。
ターゲットも入っているし、方法も、ゴールらしきものも入っている。一見すると、それっぽくまとまってるんですが、これで商品を買う理由が分かるかというと、何も分からないんですよね。
40代のひとり社長が何に困っているのか。AIで何を変えるのか。自由とは、売上が増えることなのか、働く時間が減ることなのか、嫌なお客さんと付き合わなくて済むことなのか。
そこが全部ぼやけています。
要するに、コンセプトを作ったのではなく、コンセプトシートの空欄を、今っぽい言葉で埋めただけです。
コンセプトメイクとは、こういう言葉遊びではありません。
AIに「事業コンセプトを100個出して」と頼めば、きれいな言葉はいくらでも出てきます。なので、これからのコンセプトメイクで価値があるのは、言葉を作ることではなく、自分が誰に、どこまで責任を持ち、その代わりに何をやらないのかを決めることなんですね。
コンセプトメイクとは、選ぶ基準ではなく「捨てる基準」でもある
僕は昔から、コンセプトを次の3つで考えています。
- ターゲット。何に困っている、どんな人と付き合うのか。
- プロセス。どんな方法と判断によって、その問題を解決するのか。
- 目的地。その人に、どんな状態になってもらうのか。
この3つ自体は今も変わっていませんが、単に「誰に・何を・どうやって」を決めればいいわけではなくて。
コンセプトが決まるということは、誰とは付き合わないのか、どんな方法は使わないのか、どんな売上ならいらないのかまで決まるということです。
たとえば「顧客第一」を掲げながら、相性の悪いお客さんまで受け入れ、言われたことを全部やり、値下げにも応じるのであれば、それはコンセプトではありません。ただ断れないだけです。
コンセプトは、何でも受け入れるための看板ではなく、自分の事業を薄めないための境界線なんですね。
ターゲットは、年齢や職業ではなく「困り方」で決める
「30代女性」「地方の経営者」「起業3年以内のフリーランス」といった属性を並べる人は多いんですが、同じ年齢、同じ仕事、同じ年商でも、困っていることは全然違います。
新規客が来なくて困っている人もいれば、新規客は来るけど嫌なお客さんばかり増えて困っている人もいる。売上が足りない人もいれば、売上はあるのに仕事へ人生を奪われている人もいます。
この人たちへ、同じ商品を売るのは無理がありますよね。
僕が考える「狭さ」は、属性を細かくして市場を小さくすることではなく、自分が責任を持って価値を提供できる範囲を決めることです。
なので、ターゲットを決めるときは「誰か」だけでは足りません。
その人は今、何に腹が立っているのか。何を諦めかけているのか。どんな解決策を試して、なぜ上手くいかなかったのか。今後も付き合い続けたいと思える相手なのか。
そこまで見えて、ようやくターゲットになります。
人間が見えていないのに、ペルソナの名前や年齢だけ細かく決めても、知らんがなです。
プロセスには、その人の判断基準が出る
プロセスへ「AI」「SNS」「コンサルティング」「コーチング」と入れただけでは、方法を決めたことにはなりません。
同じAIを使う人でも、とにかく作業を減らしたい人と、人間にしか出せない判断へ時間を使いたい人では、提供する価値が違います。同じコンサルタントでも、お客さんの言うことを全部実行する人と、今は買わない方がいいと伝えられる人では、関係の作り方が違います。
プロセスとは、使う道具の名前ではなく、問題をどう捉え、何を優先し、どこで他人と違う判断をするのかということです。
その判断には、現場での経験が出ます。
何をやって失敗したのか。何を断ったのか。目先の売上を失ってでも残したものは何か。そこから出た方法でなければ、競合が同じ言葉を使った瞬間に埋もれます。
「独自メソッド」という名前だけ付けて、中身がどこかで見たノウハウなのであれば、独自なのはメソッドではなく命名だけですからね。
目的地は、売上を増やした先まで考える
事業系のコンセプトでは、目的地が「売上アップ」「集客の自動化」「時間と場所に縛られない働き方」で終わりがちです。
もちろん、売上も、時間も大事です。
ただ、売上が増えた結果、嫌なお客さんが増え、働く時間も増え、家族や仲間からの誘いを断り続けるのであれば、僕はそれを成功だとは思いません。
目的地には、お客さんが得る成果だけではなく、その事業によって、どんな時間を過ごせるようになるのかまで入っていた方がいいです。
僕が今考えているのは、単に仕事から人生を守ることではなく、面白そうな人に会う、行ったことのない場所へ行く、家族や仲間から誘われたときにすぐ動く、といった「人生の可動性」を作ることです。
なので、売上は増えたけど動けなくなるコンセプトは、僕にとっては目的地が間違っているということになります。
何を成功とするかが決まっていなければ、売上が増えるほど理想から遠ざかることもあるんですよ。
良いコンセプトと、悪いコンセプトの違い
たとえば、次のようなコンセプトがあったとします。
ひとり社長が、最新のマーケティングによって、自由と豊かさを手に入れる。
言葉はきれいですが、誰が何に困っているのか、どんな判断で変えるのか、何をもって自由とするのかが分かりません。誰でも言えるので、誰が言っても同じです。
これを、今の僕の考え方で作るなら、こうなります。
新規集客と相性の悪いお客さんに疲れている経営者やフリーランスが、付き合う顧客と提供範囲を明確にし、少数のお客さんとの継続・紹介によって十分な利益を残しながら、家族や仲間との好奇心へすぐ動ける事業を作る。
かなり長いですよね。
でも、最初から短いキャッチコピーにしようとすると、大事な判断が全部消えます。まずは長くてもいいので、誰に、何を、どうやって、どこまで届けるのかを言い切る。その後で、プロフィールや商品名に使える長さへ削ればいいんです。
言葉を短くするのは最後です。
中身がないまま短くしても、ただ何も言っていない文章が完成するだけですから。
コンセプトは、会議室では完成しない
仮コンセプトを3つ作って比べるのは構いませんが、会議室で言葉を眺めながら「これが一番しっくりくる」と決めても、ほぼ自分の好みしか分かりません。
実際に発信する。商品として見せる。相談を受ける。断られる。想定していなかった人から反応が来る。仕事をしてみたら、好きだと思っていた相手に疲れる。
そういった現場を通して、ターゲットも、プロセスも、目的地も変わります。
なので、コンセプトは一度作って守り続けるものではなく、実際の反応と自分の変化を見ながら、残すものと捨てるものを決め続けるものなんですね。
僕自身、「狭くて深いマーケティング」の考え方は変わっていませんが、その目的は変わりました。以前は人生を守るためでしたが、今は守れていることを最低条件にして、その上で家族や仲間と刺激的な人生を送るために使っています。
目的が変わったからといって、過去が間違いになるわけではありません。
経験が増えたのに、昔作ったコンセプトを一字一句変えない方が不自然です。
コンセプトメイクで確認する5つのこと
コンセプトを作ったら、言葉のかっこよさではなく、次の5つを見ます。
- 誰の、どんな困り方に責任を持つのか。
- その人を、どんな状態まで連れていくのか。
- 自分は、どんな経験と判断によってそれを実現するのか。
- そのために、誰と付き合わず、何をやらないのか。
- 実際の相談、購入、継続、紹介によって検証できるのか。
この5つへ具体的に答えられないのであれば、まだコンセプトではなく、雰囲気のいい文章です。
コンセプトメイクは、きれいな言葉で自分を大きく見せることではありません。
自分が誰と関わり、どんな問題へ責任を持ち、何を捨てても残したいのかを決めることです。
そこまで決まれば、発信する内容も、作る商品も、断る仕事も、使う時間もつながっていきます。
逆に、誰にでも売り、何でもやり、売上さえ増えればいいのであれば、コンセプトなんて作らなくていいんですよ。
どうせ守らないので。
僕が現在この考え方をどう事業と人生へ落とし込んでいるかは、「狭くて深いマーケティング」とは何か(2026年版・再定義)にまとめています。























