マーケティングのセオリーとしては「お客様目線」「マーケットイン」、そしてそのために「リサーチ!リサーチ!リサーチ!」なんですが、このワンセオリーは崩壊しつつあります。
というか、別の選択肢でビジネスを長期に渡って成立させるアナザーセオリーがだいぶ浸透してきているんですよね。
下記のようなツイートをした通り、やはりSNSの力は大きいです。
SNSをやった方が良い理由を聞かれたら「プロダクトアウトで商売が成り立つから」と答える。これはマジでデカい。そういう時代。
マーケットインは自分のお客さんに対してしっかりやれば良い。「マイマーケットイン」って感じ。
セオリー通りのマーケットインはバッティングしまくるからね。
— ハットリシンヤ|マーケとカメラとイロイロ (@FACTDEAL) September 14, 2020
今の時代は「オタク必勝ワールド」ですね。
好きなことだけで食っていけるとかそういうファンタジー話ではなく、誰に何を言われようと尋常じゃない情熱とこだわりを持ってプロダクトしてる人が報われるということ。
逆に市場の空気ばかり読んでる人は、初動で爆発させないと後発組に食われちゃう。
— ハットリシンヤ|マーケとカメラとイロイロ (@FACTDEAL) September 15, 2020
まさに今のこの世は「オタク必勝ワールド」なわけでして「特に意識することなくやっちゃってる」オタクには、並の努力や苦行を積み重ねただけでは到底勝てないということを多くの人は感じ始めていますよね。
で、こういった話をすると「今の時代、プロダクトアウトでは商売は成り立たない」「マーケットインから始めなければならない」というマーケティングの教科書的な反論は必ず起こります。
どんなにこだわって作っても、そこにニーズがなければダメだと。
が、これから生き抜いていく上では、その思考がもう凝り固まってしまってるんですよね。
そもそも「プロダクトアウト」がお客さん目線ではないと思い込んでいませんか?必ずしもニーズと合致する必要があるんですか?と。
もちろん、遊び半分、片手間のプロダクトアウトでは話になりませんが、プロダクトアウトも一定のレベルを超えると「究極のお客さん目線」になるんですよね。
中途半端なマーケットインよりもハードなプロダクトアウトが評価される時代になったとでも言いましょうか、もうこの2つの考え方に垣根を作るということ自体が古いんです。
検索の世界で生きている人
人々はググることが減って、インスタやTwitter、YouTubeで検索するようになったと言われていますが、これによってよりリアルな情報にリーチできるようになったのは確かです。
とはいえ「ググるだけ」とか「Twitterで検索するだけ」といったように、どちらかだけで完結することはまだまだ少ないですよね。
ググった際、上位表示されるサイトはそれはそれは酷いものばかりになりましたが、それ以下や2ページ目、3ページ目に出てくるサイトは信憑性の高いものはまだありますから。
SNSよりも情報の網羅性(ムダも多いですが)も高いですし。
なので、ググって出てきた情報の裏を取る、リアルな声を聞くためにSNSで検索をしたり、逆にSNSでの偏った情報(サクラかどうかわからないものなど)を俯瞰的に見るためにググるとか、行ったり来たりするのが現在の検索の仕方かなと。
多くの人はこういった世界に生きていますし、実際それで支障なく幸せな生活を送ることができます。
で、そういった「最終的に行動の決め手となる情報にたどり着きたい」という人たちにリーチしてもらうために、しっかりとリサーチをして情報発信をするというのはまさにマーケットインの考え方ですね。
そして、より具体的に問題解決をするために、その先にある商品やサービスを用意しておくということです。
一方で、SNSという場所には違うニーズも存在していて、例えば、あなたも問題解決以外の目的で検索していませんか?
あるいは、検索や交流以外の目的でSNSに存在していませんか?ということなんです。
SNSに刺激を求めている人
SNSの中には良くも悪くも「刺激」を求めている人、そしてその刺激に対して反応する人が多数存在していて、何だったらそれだけを目的としてTwitterのアカウントを持っている人も一定数います。
たとえそれが自分の人生と全く関わりのないことであったとしても、自分が気になっているカテゴリーやジャンルでなくても良いから、とにかく刺激が欲しいという人がいるわけなんですね。
ネガティブな部分で見ると、批判とか誹謗中傷がわかりやすいです。
自分の人生において、何の利益にもつながらないとわかっていても、首を突っ込んであーだこーだと言わなければ気が済まない人。
ポジティブな部分で見ると、誰かを応援したりだとかサポートしたりだとかいったものがそれにあたります。
で、オタクというのは究極の専門家、見識者であると同時に、こういった「刺激が欲しい」という人たちのニーズを満たす役割を担う人物(商品)でもあるんですね。
それは簡単に言えば「誰のでも良いし何でも良いからブッ飛んだものを見たい」というニーズであり、そのニーズを満たすのはマーケットインではまず不可能で、濃厚でハードなプロダクトインだからこそサプライズを提供できるわけです。
マーケットインというのは「顧客が望むものを作る」「売れるものだけを作って提供する」という考え方なので、予定調和が起こって当然です。
一方で、プロダクトアウトというのは「自分が作りたいものを作る」「自分が売りたいものを売る」という考え方なので、市場が全く予想していなかったものが出てくる可能性も高く、非常に刺激的ですよね。
ただ、ここからが、ただのプロダクトアウトで終わるのか、プロダクトアウトが究極のマーケットインになるのかの分かれ道で。
市場が予想していなかったものでも、中途半端なものは誰の琴線にも触れませんし「まぁ、凄いけど別にいらないよね」となります。
SNSにいる人は、みんな目が肥えた人ばかりですから。
が、それがオタクレベルで追求されたものは「ヤバっ!」「どうなってんの?」という反応が得られ、まさに「刺激が欲しい」というニーズを満たすんですね。
それが普段の自分の趣味趣向と違うものであったとしても。
そして、刺激を受けた人が「コレ(この人)ヤバいよ」と言って拡散し、その筋の人や関連する人の元までつながり、結果として本来のニーズにリーチする結果となります。
オタク領域がない人
ここまで話をすると「自分にはオタク領域がない」と思われる人は多いと思いますし、実際に今から何かしらのオタクになるのは大変ではあります。
ただ、オタク領域を作るために、良く言われるように必ずしも10,000時間必要なのかというとそういうことでもないんですね。
オタクというのは「好きで好きでたまらないものを積み重ねたもの」です。
もちろん、何十年も積み重ねてきている人には敵わないんですが、積み重ねの段階というものがあるので、今の段階における情熱や尋常じゃないこだわりが伝われば良いんです。
焦って知識やスキルを広げようとすると、それこそオタクキングとバッティングしますし、自分の存在感がなくなってしまうので、まずは狭く深くオタクを追求して、それによって刺激を与えることができれば良いんですね。
例えば、僕もカメラを好きになってからオタク領域にガンガン突っ込んでいってはいますが、まだまだ経験は浅いですし知識もスキルも足りません。
それでも尋常じゃない情熱とこだわりを持って撮影した1枚の写真を、尋常じゃない情熱とこだわりを持ってレタッチをしたら、それが評価してもらえたりしますし、それが撮影の仕事につながったりもするんですね。
今の段階でできることに対して、目一杯時間と情熱、あるいはお金を注ぎ込むことによって、必要な人にはちゃんと届くということです。
マイマーケットイン
じゃぁ、マーケットインの考え方は全く必要ないのかというと、もちろんそういうわけではありません。
ハードプロダクトアウトによる刺激に反応してくれて、自分の市場(オタク領域)に入ってきてくれたお客さんに対してはしっかりとリサーチをし、お客さんが求めるものを作って提供するということです。
マーケティング的な動線でいうと「ハードプロダクトアウト ▶︎ マイマーケットイン」というイメージですね。
尋常じゃない情熱とこだわりを持って商品やサービスを産み出し、それに反応しくれた人や、そこからつながって評価してくれた人、そして購入に至ったお客さんに対してはとことん寄り添いましょうということです。
マーケットインはどうしてもライバルが多くなります。
資金力のある強者とバッティングしてしまうと到底勝てないので、まだ強者がいないマーケットかつ資金と時間を投下できるのであれば、マーケットイン起点もありかなと。
ただ、弱者が勝てる可能性を高める方法は「オタクであること」、つまりプロダクトアウト起点なんですよね。
お金なんかでは領域を破壊されない深みやオリジナリティーがあること、それだけのものを生み出せる尋常じゃない情熱とこだわりがあることが条件となりますが。
もちろん、この考え方に振り切って商売をしましょうということではなく、できることならマーケットイン起点のビジネス、プロダクトアウト起点のビジネス、両方持っておくことがベストだと思いますしね。
マーケットインだけではなく、ハードなプロダクトアウト起点のビジネスを持つことも視野に入れること、そしてそれを上手くSNSに乗せることでマーケティングの幅が広がるので参考にしていただければ。