どうも、服部(@marketing_factdeal)です。
ビジネスの成功を定義する指標は無数にありますが、本質を突き詰めれば、究極的には2つの問いに集約されます。
❶ その事業は、一回の取引でどれだけ豊かな利益をもたらすか(収益性)
❷ その利益は、来月、来年、10年後も安定して発生し続けるか(継続性)
多くの経営者やフリーランスが、売上の規模(売上高)という幻想に囚われ、この2つの本質的な問いを見失っています。
その結果、忙しいのに手元に現金が残らない「貧乏暇なし」の状態や、利益は出ているが明日の集客に怯える「自転車操業」や「ジリ貧」の状態に陥ります。
そうならないために、この記事では、下記4象限のマトリックスを使い、すべての事業をA領域(理想的なポジション)へと昇華させるための全戦略を解説します。
なぜ「売上」ではなく「収益 × 継続」なのか
多くのビジネス現場では、「売上目標」が絶対的な指標として君臨していますが、売上そのものは単なる「通過点」に過ぎません。
経営の本質的な安定と成長を左右するのは、売上の背後にある「収益の質」と「時間の概念」なんですが、なぜこの2つの軸で事業を評価しなければならないのか、その根本的な理由から解説していきます。
1.「収益性」という名の「参入障壁」と価値の証明
縦軸の「収益性」は、財務諸表上の「粗利益率」という数字以上の意味を持ちます。
高い収益性が維持されているということは、市場において、顧客が他社との価格比較を超えて、あなたの商品やサービスに高い対価を支払うことを厭わない、「特別な理由」が存在することを証明しています。
一般的に、収益性が低下するのは、競合他社が同じような価値を安く提供し始めたときですが、高収益を維持できている状態は、そこに強力な「参入障壁」があることを意味します。
それは独自の特許かもしれませんし、真似できない熟練の技術、あるいは顧客との間に築かれた、強固なブランド・エクイティかもしれません。
つまり、収益性の高さとは、あなたが市場において「どれだけ替えのきかない存在か」を映し出すバロメーターなんです。
知的財産と独占:特許、著作権、独自の製造ノウハウによる圧倒的な優位性
ブランド・エクイティ:心理的な信頼と憧れが生む「高くてもこれがいい」という指名買い
希少性と専門性:他に解決できる企業がいないという「スキルの希少性」による価格決定権
2.「継続性」という名の「顧客との心理的距離」と信頼の蓄積
横軸の「継続性」は、一度獲得した顧客をいかに自社のエコシステム(生態系)に取り込み、共生関係を築けているかどうかを示します。
ビジネスにおいて最もコストがかかるのは、言うまでもなく「新規顧客の獲得」です。
継続性が低い事業は、穴の開いたバケツに水を注ぎ続けるようなもので、常に莫大な広告費や営業エネルギーを消費し続けなければなりません。
一方で、継続性が高い状態とは、顧客があなたのサービスを「生活や業務の一部」として組み込んでいることを意味します。
これは利便性という物理的なロックインだけでなく、蓄積されたデータや、長く使い続けることで生まれる「慣れ」や「愛着」といった心理的なつながりも含まれます。
継続性の高さは、顧客があなたを必要とし続ける時間の長さであり、それは企業にとっての「将来の確実性」そのものです。
利便性のロックイン:業務基盤やインフラとして組み込まれ、やめると支障が出る状態
心理的スイッチングコスト:信頼、コミュニティへの所属感、他へ移る際の手間の大きさ
データの蓄積:使えば使うほどパーソナライズされ、他社に移ると不便になる構造
各領域の深層と、そこに潜む「見えないリスク」
画像に示されたA〜Dの4つの領域は、一見すると単なる分類に見えますが、それぞれの領域には特有の「ビジネスの呼吸」と「落とし穴」が存在します。
経営者は、自社の事業がどの空気感をまとっているのかを、正確に把握しなければなりません。
A領域:理想的なポジション(高収益・高継続)
ここは、全てのビジネスパーソンが目指すべき「聖域」で、高い利益を確保しつつ、顧客が離れないという、経営における「正解」を体現しています。
キャッシュフローが潤沢かつ予測可能なため、経営者は目先の資金繰りから解放され、3年後、5年後の未来を創るための破壊的な投資に集中することができます。
しかし、この平穏な状態こそが最大の敵となることがあります。
たとえば、「イノベーターのジレンマ」という言葉がある通り、成功している企業ほど、現在の完成されたモデルを守ろうとするあまり、外部で起きている小さな変化や破壊的な技術革新を軽視してしまいます。
圧倒的なシェアを誇っていた企業の足元をすくうのは、現状維持バイアスと、顧客の変化に対する感受性の鈍化、つまり「傲慢」という名の静かなるリスクです。
B領域:短期的利益重視(高収益・低継続)
一撃の利益が大きく、社内が活気づきやすい「狩猟型」の領域です。
トップセールスマンが活躍し、華やかな成功事例が生まれやすい一方で、その成功は常に「使い捨ての情熱」の上に成り立っています。
顧客との関係は取引が終わればリセットされ、翌月にはまたゼロから「新しい獲物」を探しに行かなければならないプレッシャーが組織を支配します。
この領域の恐ろしさは、成功体験が一種の麻薬のように働くことです。
一度に数千万、数億というお金を動かす興奮に慣れると、地味で積み上げが必要な継続モデルの構築を「まどろっこしい」と感じてしまいます。
しかし、リーダーの老化や市場環境の冷え込み、あるいは強力な競合の参入により、新規獲得が止まった瞬間、組織は一気に崩壊の危機に直面します。
広告宣伝費や営業人件費の肥大化、および「常に走り続けなければならない」組織の疲弊がつきまとうということですね。
C領域:長期的安定性重視(低収益・高継続)
派手さはないものの、企業の土台として静かに機能し続ける「農耕型」の領域です。
日々の利益は薄いかもしれませんが、不況時でも変わらず入金があるという安心感は、経営において計り知れない価値を持ちます。
この事業が屋台骨として機能しているからこそ、企業は新しい挑戦へのリスクを取ることができます。
しかし、ここには「低利益体質への慣れ」という罠が潜んでいて、顧客との関係が長く続くあまり、本来すべき値上げの交渉やコスト構造の改善を後回しにしがちです。
原材料費の高騰や最低賃金の上昇といった外部要因による「コストプッシュ・インフレ」が起きた際、利益率の低さが致命傷となり、気づいた時には自力で這い上がれない「ゆでガエル」の状態になっているのです。
利益率の低さによる資本蓄積の遅れ、および突発的なコスト増への脆弱性ですね。
D領域:改善が必要(低収益・低継続)
最も過酷で、一刻も早く脱出しなければならない領域で、社内で「忙しいのに儲からない」という言葉が飛び交っているなら、その事業は間違いなくここに位置しています。
誰でも参入できる分野で価格競争に巻き込まれ、かつ顧客が定着しないため、現場は常に精神的・物理的な限界にさらされます。
この領域に留まり続ける最大の弊害は、「努力の搾取」です。
経営者や社員が「もっとがんばればいつか報われる」という根性論で構造的な欠陥をカバーしようとしますが、それは未来への投資に必要な「時間」と「精神的エネルギー」を浪費しているに過ぎません。
戦略の不在を汗で補うことは、組織にとって緩やかな死を意味するため、抜本的なモデルチェンジか、あるいは「勇気ある撤退(損切り)」の決断が必要です。
A領域へ移動すつるための、具体的な変革戦術
マトリックスを俯瞰した経営者の使命は、現在地を直視した上で、全事業を「右上(A領域)」へと誘導する導線を引くことです。
ここでは、各領域から理想のポジションへ移動するための、具体的なトランスフォーメーション手法をお伝えします。
1.【B → A】単発の「狩猟」を終わらない「共生」へ変える
高い収益性を維持できている(=価値は認められている)うちに、その関係性を「一回切り」で終わらせない仕組みを導入します。
そのためには、顧客が商品を購入した後に抱く「不安」や「新たな課題」に先回りすることがカギとなります。
具体的には、売り切り型だった商品を「成果提供型」や「伴走型」の契約に切り替えます。
たとえば、高額な機器を販売するだけでなく、その機器が常に最高のパフォーマンスを発揮するための「予兆検知」や「運用コンサルティング」を月額で提供します。
これにより、顧客にとっては「導入して終わり」ではなく「使い続けるほど価値が出る」体験に変わり、企業にとっては単発の大きな利益が、永続的な収益源(ストック)へと昇華します。
2.【C → A】「安定した奉仕」を「独自のブランド」へ昇華させる
長年培った顧客との信頼(=継続性)を武器に、今度は「提供価値の密度」を高めて単価を引き上げる戦略です。
顧客があなたを信頼しているなら、彼らは「もっと良い解決策があるなら、あなたから買いたい」と考えているはずなので、「当たり前のサービス」にデータ分析や専門的なインサイトを加えた「プレミアムな体験」を付加します。
たとえば、単なる清掃業であれば、清掃データからオフィスの稼働状況を分析し、最適な空間レイアウトを提案するコンサルティングを付帯させます。
これにより、単なる「作業員」から「戦略的パートナー」へと立ち位置を変え、低収益という呪縛を解き放つことが可能になります。
3.【D → 脱出】不毛な消耗戦から抜け出す「絞り込み」の極意
D領域からの脱出は、何かを加えることではなく「捨てること」から始まります。
全方位に向けたサービスを、特定の悩みを持つ特定の顧客層にだけ絞り込むことで、強制的に収益性を引き上げます。
たとえば「誰にでも売る」という姿勢は、価格競争という最底辺の戦いを強いることになりますが、「〇〇業界の、〇〇というトラブルに特化した専門家」と名乗った瞬間、あなたのサービスは比較対象のない「唯一無二」のものになります。
たとえ市場が小さくなっても、その中で高い利益率(B領域)を確保し、そこから信頼を積み上げてAを目指すのが、負け戦を勝ち戦に変える唯一の道です。
財務視点から見たLTVとCACの力学
このマトリックスを論理的に支えているのは、マーケティングと財務の融合指標である「ユニット・エコノミクス(1単位あたりの経済性)」です。
感覚的な判断を、冷徹な数字による「確信」に変えるための計算式を理解しましょう。
1. LTV(顧客生涯価値)という継続性の正体
継続性が高い(右側に位置する)ということは、計算式においてLTVが最大化されていることを意味します。
LTV = 平均単価 × 収益率 × 継続期間
で表されますが、この「期間」が伸びるほど、一人の顧客を獲得するためにかけたコストが何倍にもなって返ってきます。
A領域やC領域の強さは、この「期間」の長さにあります。
一度獲得した顧客が長年利益を運び続けてくれるため、企業は「今日明日の食いぶち」を心配することなく、長期的な視点で次の戦略を練ることができます。
2.CAC(顧客獲得コスト)と収益性の相関
一方、縦軸の収益性は、獲得コストであるCACとの対比で評価されるべきです。
たとえ収益性が高くても、それを獲得するために利益以上のコストがかかっているなら、それは実質的にD領域なので。
A領域: LTV/CACが5倍、10倍。投資すればするほど、複利的に富が増える状態。
B領域:単発利益は大きいが、CACも高いため、常に高精度のマーケティングが要求される。
C領域:単価は低いが、CACを極限まで抑える(紹介や自動流入)ことで利益を確保する。
D領域:LTV<CAC。売れば売るほど、将来の利益を食いつぶしている状態。
組織(チーム)論としてのマトリックス
戦略を立案するのは経営者ですが、組織の場合、それを実行するのは現場の社員です。
社員が「目先の売上」という誘惑に負けず、マトリックスの右上(A領域)を目指すようになるためには、組織のOS(評価制度や文化)を書き換える必要があります。
1.「売上至上主義」から「LTV貢献主義」への転換
多くの営業組織では、当月の売上額のみでインセンティブが決まります。
これでは、社員は「B領域(単発大口)」や、最悪の場合は「C領域(無理な値引き)」に走り、後のトラブルや早期解約を軽視するようになります。
これを防ぐためには、評価基準に「継続率」や「顧客単価の成長」を組み込む必要があります。
つまり「売ってきた金額」だけでなく、「その顧客がどれだけ長く、健全に利益をもたらしてくれているか」を評価の柱に据えることで、社員の意識は自然とA領域へと向かいます。
2.「ポートフォリオ経営」の全社共有
このマトリックスを経営陣だけの秘密にせず、全社員の共通言語にします。
「このプロジェクトは今、C領域にある。これをAに動かすためには、どんな付加価値が必要か?」
「この新規案件はB領域だが、いずれAにするための継続プランは練られているか?」
このように、全部署が共通の地図を持って議論することで、開発、営業、サポートが一体となって「右上」を目指す組織文化が醸成されます。
経営というのは、「マトリックスの上と右」への飽くなき追求です。
4象限のマトリクス画像は、一見シンプルですが、経営の本質を示していて、「儲かるけど続かない」のはギャンブルであり、「続くけど儲からない」のは自己犠牲的なボランティアです。
ビジネスとして持続可能な成長を目指し、社員やその家族を守り抜くためには、僕たちは常に右上の「A領域」を見据え続けなければなりません。
まずは、あなたのビジネスの現在地を直視することから始めてください。
それは、痛みを伴う作業かもしれませんが、現在の配置が「成り行き」の結果であるなら、それを「意図的」な戦略によって変えることは可能です。
今日、あなたが行う決断が、会社いやビジネスを「右上」へ一歩近づけるものかどうか。その問いを胸に、変革の第一歩を踏み出してください。
フリーランスや個人事業主、一人社長の人は、ぜひこちらも併せて読んでください































